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拡大教科書をめぐる課題と取り組み

このページの情報は 筑波大学附属盲学校・筑波大学附属視覚特別支援学校・弱視問題研究会の宇野和博さんより転載の許諾を頂いて掲載しております。(2003年2月4日発信以降の情報)

2008.9.10 パブリックコメント募集中

6月に成立した教科用特定図書普及促進法にもとづく施行規則案が9月3日に公示 されていますが、現在、文部科学省初等中等教育局教科書課では、パブリックコメントを募集中です。
〆切は9月12日(金)となっております。 くわしくはこちらを参照してください。
 また、問い合わせ先は、以下になります。
文部科学省初等中等教育局教科書課 電話:03-5253-4111(内線2412・2756)

2008.9.10 拡大教科書普及推進会議とセミナーのご案内

  1. 文部科学省の拡大教科書普及推進会議のワーキンググループの会議も着々と進んで おります。その議事録も徐々にアップされておりますので、お時間がある時にご覧下さい。
  2. 将来の教科書のユニバーサルデザイン化に向け、次のようなセミナーが開かれます。
    私も講演をさせていただくことになっておりますが、よろしければお出かけ下さい。 詳細は以下のURLにてご覧下さい。
    http://www.jepa.or.jp/seminar/seminar.php?id=122
    http://www.shinbunka.co.jp/joholog.htm"

2008.8.26 拡大教科書に関する情報

啓林館が来年度より中学校の1年から3年までの数学の拡大教科書を発行すること になりました。現在、社内で詳細な案内を作成中とのことですので、詳しい内容につ きましては分かり次第再度お知らせしたいと思います。
教科書バリアフリー法成立の意義と今後の課題について私のつたない文書ですが、 一考察をまとめました。次のLVCの部屋のホームページで読むことができますので、お時間があればご一読下さい。

2008.8.13 8月10日の朝日新聞のに拡大教科書に関する記事

8月10日の朝日新聞に拡大教科書に関する記事が掲載されました。機会があれば、 ご覧下さい。
手前味噌で恐縮ですが、鈴木寛参議院議員のインターネットテレビに私が出演しま した。お時間がございましたらこちらもご覧下さい。
以上、取り急ぎ用件のみにて失礼致します。よろしくお願い致します。

2008.7.23 点友会より拡大版中学生用地図帳発行について

「中学校社会科地図」拡大字版の発刊

「小学生の地図帳」に続いて「中学校社会科地図」(帝国書院刊)の教科書を拡大字出版します。
その概要が決まりましたので、お知らせいたします。
適切な拡大字の提供によって、学びやすい環境が生まれます。
 平等な勉学環境ができることを願って、地図出版の帝国書院と私達ボランティアサークル点友会が共同で出資・編集して、出版する拡大教科書です。
原本:帝国書院編集部編「新編中学校社会科地図」初訂版(B5判。151ページ)
拡大字版:原本と同じ印刷・製本方法で3分冊(B5判。約750ページ) 「中学校社会科地図」拡大字版 3分冊(約750ページ)の発行。
発行日・平成21年3月に拡大字の「H21年度教科書」として発行します。
文字:ゴシック体と丸ゴシック体の22ポイント字を主体に編集してあります。
拡大した地図の部分は主な都市・名称のみ22ポイント字の貼り付けです。
覚えなくてはならない地名を優先し、小さな地名は抹消される箇所もあります。
地図上の県名や市名など重要な部分は白抜き文字で見やすくしてあります。
地図の海岸線は太くしてあり、陸地との境界がわかるようになっています。
読みやすくするために原本地図を2〜8分割し、見開きB4判に拡大して、国や都市の把握がしやすいように配慮してあります。
地形図(山・川・海・砂漠など)と都市図と分けて表示するページもあり、分野別に検索して、出来るだけ多くの情報を早く把握できるような地図としました。
通しページ(最上段)と原本ページ(最下段)で原本と対比できる編集です。
薄い色は濃い色に変えたり、統計・資料図は色変更で見やすくしてあります。
本の大きさ:原本と同じB5判製本。地図は見開きでB4判になっています。
拡大字版頒布価格:B5判3分冊・・・1セット3万円の予定です。
*中学生は拡大図書・拡大教科書として申請すれば無料で入手できます。
頒布価格
「小学生の地図帳」拡大字版と同じく、対象の弱視中学生だけでなく、希望の学校や弱視者・図書館にも有料頒布したいと思っています。
弱視の中学生:中学校・教育委員会・文科省に届け出て無料(文科省支払い)
教科地図として無料配布を受けたことのある弱視中学生:1000円(送料600円プラス)
弱視以外の障害の中学生:2000円(送料500円プラス)
弱視の高校・大学・社会人:3000〜5000円
学校・図書館・福祉施設・教育施設など:3万円
注文・問い合せ先:ボランティアサークル点友会
石津利幸 電話/FAX 0771-22-5274 〒621-0833 亀岡市東つつじヶ丘曙台1-7-17 

2008.6.16 平成20年6月10日(火)文部科学委員会の会議録

文部科学委員会の会議録

○佐藤委員長 これより会議を開きます。
参議院提出、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。参議院文教科学委員長関口昌一君。
○関口参議院議員 おはようございます。
ただいま議題となりました障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案につきまして、その提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。
憲法には、すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有すると規定されております。
また、教育基本法には、国と地方公共団体に対し、障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上の必要な支援が義務づけられております。
しかし、現実には、障害者は障害のない人に比べて大きな負担を強いられながら教育を受けている場合も見受けられます。例えば、本法律案提出のきっかけとなった小中学校の通常学級及び高等学校に在学する弱視の児童生徒については、その多くが、ルーペ等を使用しながら学校教育を受けているため、教科書の読解や授業の進度に苦労するなど、大きなハンディキャップを背負って勉強しております。
この問題を解決するためには、教科書の文字、図形等を拡大した拡大教科書が必要となることから、小中学校の通常学級で学ぶ弱視の児童生徒に対しては、平成十六年度から予算措置により拡大教科書の無償給与が始まりましたが、その作成のほとんどを各地のボランティア団体等に依存しているため、限られた教科と部数しか供給されておりません。
また、近年、教科書等について、視覚障害に限らず、例えば発達障害のある児童生徒など、さまざまな障害等を有する児童生徒にとって可能な限り使いやすいものとするように配慮していくことが求められております。
こうした現状にかんがみ、本法律案は、幅広く障害等のある児童生徒に配慮した教科書等の普及促進等を目指そうとするものであります。
以下、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。
第一に、この法律は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童生徒のための拡大教科書や点字教科書等を教科用特定図書等と位置づけ、その発行の促進、使用の支援等により、その普及の促進等を図り、児童生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず、十分な教育が受けられる学校教育の推進に資することを目的としております。
 第二に、国は、教科用特定図書等の普及の促進等に関して必要な措置を講じなければならないこととするとともに、教科書発行者は、その発行する検定教科用図書等について適切な配慮をするよう努めることとしております。
 第三に、教科書発行者は、文部科学省令で定めるところにより、検定教科用図書等の電子データを文部科学大臣等に提供しなければならないこととし、提供された電子データは、教科用特定図書等を発行する者に対して提供することができることとしております。
 第四に、文部科学大臣は、教科用特定図書等について、標準的な規格を定め、公表するとともに、教科書発行者は、文部科学大臣が指定した種目の検定教科用図書等について、この規格に適合した標準教科用特定図書等の発行に努めなければならないこととしております。
 第五に、国は、教科書発行者による電子データの提供方法及び教科用特定図書等の作成への活用並びに標準教科用特定図書等の発行に関して、助言その他必要な援助を行うこととするとともに、発達障害等のため検定教科用図書等において通常使用される文字や図形等の認識が困難な児童生徒が使用する教科用特定図書等の整備充実のための調査研究等の推進をすることとしております。
 第六に、小中学校の通常学級及び高等学校においては、在学する視覚障害その他の障害のある児童生徒が、検定教科用図書等にかえて教科用特定図書等を使用することができるよう必要な配慮をするとともに、国及び地方公共団体は、教科用特定図書等の発行に関する情報の収集、提供その他必要な措置を講ずることとしております。
 第七に、国は、視覚障害その他の障害のある児童生徒が検定教科用図書等にかえて使用する教科用特定図書等を小中学校の設置者に無償給付し、設置者は、各学校の校長を通じてこれらの児童生徒に給与することとしております。
 第八に、標準教科用特定図書等の円滑な発行を確保するため、その需要数の教育委員会から国への報告及び国から発行者への通知の制度を設けることとしております。
 最後に、国は、高等学校において障害のある生徒が使用する教科用拡大図書等の普及のあり方及び特別支援学校に就学する児童生徒について行う援助のあり方について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずることとするとともに、教科書発行者による電子データの提供等について、所要の著作権法の規定の整備を行うこととしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、平成二十一年度において使用される検定教科用図書等及び教科用特定図書等から適用することとしております。
 以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
○佐藤委員長
本案につきましては、質疑、討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 参議院提出、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
○佐藤委員長 起立総員。
よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
○佐藤委員長
ただいま議決いたしました本案に対し、塩谷立君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
提出者から趣旨の説明を求めます。和田隆志君。
○和田委員 和田隆志でございます。
私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案に対する附帯決議(案)
政府及び関係者は、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一 拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責務を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。
二 教科書発行者からの教科書のデジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう、必要な支援措置を講ずること。    その際、拡大教科書等を作成するボランティアにとって使い勝手のよいデジタルデータが提供されるよう、政府として適切な支援措置を講ずること。
三 障害のある児童生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進のため、教科書をはじめ、教材、教具の研究と開発に努めること。
四 将来の教科書や教材のデジタル化に備え、すべての児童生徒が障害の有無や程度にかかわらず、快適に利用できる電子教科書や電子教材が開発されることとなるよう、継続的に調査研究を推進すること。
五 無償給与の実施に当たっては、障害のある児童及び生徒に対して、必要となる検定教科書及び教科用特定図書等が確実に給与されるよう、適切な措置を講ずること。
六 高等学校において障害のある生徒が使用する拡大教科書等の普及の在り方の検討に当たっては、拡大教科書等購入費の自己負担の軽減など必要な具体的支援について検討し、その結果に基づいて適切な措置を講ずること。
七 特別支援学校における就学援助の在り方の検討に当たっては、幼稚部及び高等部専攻科の支援策を含めて検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
八 特別支援学校高等部専攻科において、いわゆる音声教科書購入費の自己負担の軽減が図られるよう、すみやかに必要な措置を講ずること。 以上でございます。
何とぞ御賛同いただきますようお願い申し上げます。
○佐藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
○佐藤委員長 起立総員。
よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡海文部科学大臣。
○渡海国務大臣
ただいまの決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
○佐藤委員長 お諮りいたします。
ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
○佐藤委員長 御異議なしと認めます。
よって、そのように決しました。

2008.6.16 平成20年6月10日(火)衆議院の会議録

衆議院の会議録

衆議院の会議録を添付いたします。
この度成立した教科書バリアフリー法案は、障害児の教科書保障という観点では大 きな意義がありましたが、当初の民主党案に比べ、以下の3点においてレベルダウン しておりました。
1.教科書出版社による拡大教科書の発行は義務規定ではなく、努力義務となりました。
2.高校における拡大教科書や点字教科書などの費用負担軽減は盛り込まれませんでし た。
3.盲学校保健理療科、理療科における音声教科書の費用補助も盛り込まれませんでし た。
なぜこれらの変更がなければ与党が合意しなかったのかは把握しておりませんが、 機会があれば確認してみたいと思います。

平成20年6月10日(火)衆議院 本会議
○議長(河野洋平君)
障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。 文部科学委員長佐藤茂樹君。
○佐藤茂樹君
ただいま議題となりました法律案につきまして、文部科学委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
 本案は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害等のある児童生徒に配慮した教科書等の普及促進等を図り、もって障害その他の特性の有無にかかわらず児童生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進を図るものであり、その主な内容は、次のとおりであります。
 第一に、国は、教科用特定図書等の普及促進等のために必要な措置を講じることとするとともに、教科書発行者は、その発行する検定教科用図書等について適切な配慮をするよう努めること、
 第二に、教科書発行者は、検定教科用図書等の電子データを文部科学大臣等に提供するものとし、文部科学大臣等は、教科用特定図書等を発行する者に当該データを提供することができるものとすること、
 第三に、文部科学大臣は、教科用特定図書等について標準的な規格を定め、教科書発行者は、当該規格に適合した教科用特定図書等の発行に努めること、
 第四に、教科用特定図書等について、国は、小中学校の設置者に無償給付し、各学校の校長を通じて視覚障害その他の障害のある児童生徒に給与することなどであります。
 本案は、参議院提出に係るもので、去る六日本委員会に付託され、本日関口参議院文教科学委員長から提案理由の説明を聴取した後、直ちに採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。
 なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
○議長(河野洋平君)
 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(河野洋平君)
 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

2008.6.10 教科書バリアフリー法案は全会一致で可決・成立

教科書バリアフリー法案成立!

当初の審議予定よりは少し早まり、本日の衆議院文部科学委員会及び本会議におい て教科書バリアフリー法案は全会一致で可決・成立いたしました。
その法文と参議院文教科学委員会での付帯決議を添付いたします。

教科書バリアフリー法案

障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(案)

目次
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 教科用特定図書等の発行の促進等(第五条―第八条)
第三章 小中学校及び高等学校における教科用特定図書等の使用の支援(第九条―第十五条)
第四章 標準教科用特定図書等の円滑な発行の確保(第十六条―第十八条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の発行の促進を図るとともに、その使用の支援について必要な措置を講ずること等により、教科用特定図書等の普及の促進等を図り、もって障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「教科用特定図書等」とは、視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため文字、図形等を拡大して検定教科用図書等を複製した図書(以下「教科用拡大図書」という。)、点字により検定教科用図書等を複製した図書その他障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため作成した教材であって検定教科用図書等に代えて使用し得るものをいう。
2 この法律において「検定教科用図書等」とは、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第三十四条第一項(同法第四十九条、第六十二条及び第七十条第一項において準用する場合を含む。)に規定する教科用図書をいう。
3 この法律において「発行」とは、図書その他の教材を製造供給することをいう。
4 この法律において「教科用図書発行者」とは、検定教科用図書等の発行を担当する者であって、教科書の発行に関する臨時措置法(昭和二十三年法律第百三十二号)第八条の発行の指示を承諾したものをいう。
5 この法律において「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。
(国の責務)
第三条 国は、児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育を受けることができるよう、教科用特定図書等の供給の促進並びに児童及び生徒への給与その他教科用特定図書等の普及の促進等のために必要な措置を講じなければならない。
(教科用図書発行者の責務)
第四条 教科用図書発行者は、児童及び生徒が障害その他の特性の有無にかかわらず十分な教育を受けることができるよう、その発行をする検定教科用図書等について、適切な配慮をするよう努めるものとする。
第二章 教科用特定図書等の発行の促進等
(教科用図書発行者による電磁的記録の提供等)
第五条 教科用図書発行者は、文部科学省令で定めるところにより、その発行をする検定教科用図書等に係る電磁的記録を文部科学大臣又は当該電磁的記録を教科用特定図書等の発行をする者に適切に提供することができる者として文部科学大臣が指定する者(次項において「文部科学大臣等」という。)に提供しなければならない。
2 教科用図書発行者から前項の規定による電磁的記録の提供を受けた文部科学大臣等は、文部科学省令で定めるところにより、教科用特定図書等の発行をする者に対して、その発行に必要な電磁的記録の提供を行うことができる。
3 国は、教科用図書発行者による検定教科用図書等に係る電磁的記録の提供の方法及び当該電磁的記録の教科用特定図書等の作成への活用に関して、助言その他の必要な援助を行うものとする。
(教科用特定図書等の標準的な規格の策定等)
第六条 文部科学大臣は、教科用拡大図書その他教科用特定図書等のうち必要と認められるものについて標準的な規格を定め、これを公表しなければならない。
2 教科用図書発行者は、指定種目(検定教科用図書等の教科ごとに分類された単位のうち文部科学大臣が指定するものをいう。次項において同じ。)の検定教科用図書等に係る標準教科用特定図書等(前項の規格に適合する教科用特定図書等をいう。以下同じ。)の発行に努めなければならない。
3 国は、教科用図書発行者による指定種目の検定教科用図書等に係る標準教科用特定図書等の発行に関して、助言その他の必要な援助を行うものとする。
(発達障害等のある児童及び生徒が使用する教科用特定図書等に関する調査研究等の推進)
第七条 国は、発達障害その他の障害のある児童及び生徒であって検定教科用図書等において一般的に使用される文字、図形等を認識することが困難なものが使用する教科用特定図書等の整備及び充実を図るため、必要な調査研究等を推進するものとする。
(障害その他の特性に適切な配慮がなされた検定教科用図書等の普及)
第八条 国は、障害その他の特性の有無にかかわらずできる限り多くの児童及び生徒が検定教科用図書等を使用して学習することができるよう適切な配慮がなされた検定教科用図書等の普及のために必要な措置を講ずるものとする。
第三章 小中学校及び高等学校における教科用特定図書等の使用の支援
(小中学校及び高等学校における教科用特定図書等の使用等)
第九条 小中学校(小学校及び中学校(中等教育学校の前期課程を含む。以下同じ。)をいい、学校教育法第八十一条第二項及び第三項に規定する特別支援学級(以下単に「特別支援学級」という。)を除く。以下同じ。)及び高等学校(中等教育学校の後期課程を含み、特別支援学級を除く。以下同じ。)においては、当該学校に在学する視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が、その障害の状態に応じ、採択された検定教科用図書等に代えて、当該検定教科用図書等に係る教科用特定図書等を使用することができるよう、必要な配慮をしなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項の規定による配慮がなされるよう、発行が予定される教科用特定図書等に 関する情報の収集及び提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
(小中学校の設置者に対する教科用特定図書等の無償給付)
第十条 国は、毎年度、小中学校に在学する視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が検定教科用図書等に代えて使用する教科用特定図書等を購入し、小中学校の設置者に無償で給付するものとする。
(契約の締結)
第十一条 文部科学大臣は、教科用特定図書等の発行をする者と、前条の規定により購入すべき教科用特定図書等を購入する旨の契約を締結するものとする。
(教科用特定図書等の給与)
第十二条 小中学校の設置者は、第十条の規定により国から無償で給付された教科用特定図書等を、それぞれ当該学校の校長を通じて、当該学校に在学する視覚障害その他の障害のある児童又は生徒に給与するものとする。
2 学年の中途において転学した視覚障害その他の障害のある児童又は生徒については、その転学後において使用する教科用特定図書等は、前項の規定にかかわらず、文部科学省令で定める場合を除き、給与しないものとする。
(都道府県の教育委員会の責務)
第十三条 都道府県の教育委員会は、政令で定めるところにより、教科用特定図書等の無償給付及び給与の実施に関し必要な事務を行うものとする。
(給付の完了の確認の時期の特例)
第十四条 第十一条の規定による契約に係る政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第四条第一号に掲げる時期については、同法第五条第一項中「十日以内の日」とあるのは、「二十日以内の日」と読み替えて同項の規定を適用する。
(政令への委任)
第十五条 第十条から前条までに規定するもののほか、教科用特定図書等の無償給付及び給与に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 標準教科用特定図書等の円滑な発行の確保
(標準教科用特定図書等の需要数の報告)
第十六条 市町村の教育委員会並びに学校教育法第二条第二項に規定する国立学校及び私立学校の長は、次に掲げる標準教科用特定図書等の需要数を、文部科学省令で定めるところにより、都道府県の教育委員会に報告しなければならない。
一 小中学校について採択された検定教科用図書等に係る標準教科用特定図書等であって、当該標準教科用特定図書等を使用する年度において発行が予定されているもののうち、小中学校に在学する視覚障害その他の障害のある児童及び生徒が当該検定教科用図書等に代えて使用するもの
二 特別支援学校の小学部及び中学部並びに小学校及び中学校に置かれる特別支援学級について学校教育法附則第九条に規定する教科用図書として採択された標準教科用特定図書等であって、当該標準教科用特定図書等を使用する年度において発行が予定されているもの
2 都道府県の教育委員会は、前項各号に掲げる標準教科用特定図書等の都道府県内の需要数を、文部科学省令で定めるところにより、文部科学大臣に報告しなければならない。
(標準教科用特定図書等の発行の通知等)
第十七条 文部科学大臣は、前条第二項の規定による報告に基づき、標準教科用特定図書等の発行を予定している者にその発行をすべき標準教科用特定図書等の種類及び部数を通知しなければならない。
2 文部科学大臣は、必要に応じ、前項の通知を受けた者に対し報告を求めることができる。
(事務の区分)
第十八条 第十六条第二項の規定により都道府県が処理することとされている事務及び同条第一項の規定により市町村が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、平成二十一年度において使用される検定教科用図書等及び教科用特定図書等から適用する。
(検討)
第二条 国は、高等学校において障害のある生徒が使用する教科用拡大図書等の普及の在り方並びに特別支援学校に就学する児童及び生徒について行う援助の在り方について検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
(地方自治法の一部改正)
第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。
別表第一に次のように加える。

(著作権法の一部改正)
第四条 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
第三十三条の二の見出し中「複製」を「複製等」に改め、同条第一項中「弱視の」を「視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な」に、「を拡大して」を「の拡大その他の当該児童又は生徒が当該著作物を使用するために必要な方式により」に改め、同条第二項中「文字、図形等を拡大して」を削り、「図書(」を「図書その他の複製物(点字により複製するものを除き、」に、「教科用拡大図書」を「教科用拡大図書等」に改め、同条に次の一項を加える。
4 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律(平成二十年法律第 号)
第五条第一項又は第二項の規定により教科用図書に掲載された著作物に係る電磁的記録(同法第二条第五項に規定する電磁的記録をいう。)の提供を行う者は、その提供のために必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができる。
第四十七条の四及び第四十九条第一項第一号中「第三十三条の二第一項」を「第三十三条の二第一項若しくは第四項」に改める。
(罰則についての経過措置)
五条 前条の規定の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
理 由
教育の機会均等の趣旨にのっとり、障害その他の特性の有無にかかわらず児童及び生徒が十分な教育を受けることができる学校教育の推進に資するため、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の発行の促進を図るとともに、その使用の支援について必要な措置を講ずること等により、教科用特定図書等の普及の促進等を図る必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

2008.6.10 障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する決議(案)

平成二十年六月五日 参議院文教科学委員会

政府及び関係者は、障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一、拡大教科書等の供給・普及の促進という国の責務を果たすためには、教科書発行者による拡大教科書等の発行が重要であることにかんがみ、その発行が一層促進されるよう、必要な措置を講ずること。
二、教科書発行者からの教科書のデジタルデータの提供については、その提供が円滑に行われるとともに、提供されたデジタルデータが適切に管理・活用されるよう、必要な支援措置を講ずること。
三、高等学校において障害のある生徒が使用する拡大教科書等の普及の在り方の検討に当たっては、拡大教科書等購入費の自己負担の軽減など必要な具体的支援について検討し、その結果に基づいて適切な措置を講ずること。
四、特別支援学校における就学援助の在り方の検討に当たっては、幼稚部及び高等部専攻科の支援策を含めて検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。
五、特別支援学校高等部専攻科において、いわゆる音声教科書購入費の自己負担の軽減が図られるよう、必要な措置を講ずること。
六、将来の教科書や教材のデジタル化に備え、すべての児童生徒が障害の有無や程度にかかわらず、快適に利用できる電子教科書や電子教材が開発されることとなるよう、継続的に調査研究を推進すること。
七、無償給与の実施に当たっては、障害のある児童及び生徒に対して、必要となる検定教科書及び教科用特定図書等が確実に給与されるよう、適切な措置を講ずること。
右決議する。

2008.6.5 朝日新聞記事と可決成立までのスケジュール

朝日新聞記事と可決成立までのスケジュール

朝日新聞でも次のように報じられましたので、お知らせいたします。
弱視の子のための「拡大教科書」普及へ、自公民が合意
本日6月5日の参議院文教科学委員会で教科書バリアフリー法案は前回一致で可決されまし た。今後のスケジュールですが、明日の参議院本会議でも可決され、衆議院に送られ ます。
来週11日(水)の衆議院文部科学委員会で可決され、12日(木)か13日(金) の衆議院本会議で可決、成立という予定だそうです。

2008.6.3 教科書バリアフリー法に関する読売新聞記事

教科書バリアフリー法に関する読売新聞記事

教科書バリアフリー法について読売新聞でも以下のように報じられましたので、お 知らせいたします。
文字大きい教科書普及へ…視覚障害者向け、与党と民主合意

2008.5.30 朗報 教科書バリアフリー法案について

朗報 教科書バリアフリー法案について

国会での可決に向け、ご協力をお願いしておりました「教科書バリアフリー法」案 ですが、成立できる見通しが出てきたという連絡を受けました。 以下のように毎日新聞でも報じられましたので、お知らせいたします。
拡大教科書:与党と民主で法案提出へ 出版社側に発行責任

これまで多くの団体に賛同を表明していただいたり、子どもたちの声を文書にして 寄せていただいたり、国会議員への働きかけをお願いしたり、広く世論に訴えていた だいたりとさまざまな形でご協力をお願いして参りました。 いろいろな形でご協力いただいた全ての皆々様に深く感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
大きな山場は越えつつありますが、いくつかの課題は引き続き残ると思います。 今後とも完全な問題解決まで皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。

2008.5.17 拡大教科書関連のお願い

民主党より参議院に提案されている「教科書バリアフリー関連三法案」ですが、自 民党・公明党の賛意が得られないため、審議に入れない状況が続いています。今国会 の会期も残り1ヶ月を切り、審議入りしたとしても可決成立はかなり厳しい時期にな っております。そこで、引き続きのお願いなのですが、選挙区もしくはお知り合いの 与党議員にコンタクトがとれるようでしたら、「教科書バリアフリー」の必要性を全 国各地で訴えていただけませんでしょうか。文部科学委員でなくても、国会議員は党 内で連携されているようです。その時に拡大教科書の問題が短時間で理解してもらえ るよう添付のような書類を作成しました。ご活用いただければ幸いです。その他にも 必要な書類はご連絡いただければ、送付いたします。
また、国民の声として与党に手紙、電話もしくはインターネットを通して多数の意 見を伝えていくことも大切かと考えています。以下に自民党と公明党の連絡先を記し ます。こちらもご協力いただければ幸いです。
自由民主党 〒100-8910 東京都千代田区永田町1-11-23(電話)03-3581-6211
公明党 〒160-0012 東京都新宿区南元町17(電話)03-3353-0111

2008.5.16 拡大教科書普及推進会議ワーキンググループ日程について

拡大教科書普及推進会議の下に設置されるワーキンググループの初会合が以下の日 程で開かれます。オブザーバーとして傍聴も可能ということですのでお知らせいたし ます。
@ 標準的な規格 5月27日(火)午後4時から
A デジタルデータ 5月26日(月)午後3時半から
B 高校の拡大教材 5月27日(火)午前

2008.5.10 拡大教科書に関する産経新聞記事

産経新聞に以下のような記事がありましたので、お知らせいたします。
弱視者向けの拡大教科書、普及へ本腰(産経新聞)

2008.4.26 拡大教科書普及推進会議報告

25日に文部科学省主催で行われた拡大教科書普及推進会議について報告いたします。
 最初に座長を選出し、文部科学省が作成した規約などの事務的な内容を確認し、今 後の検討事項、検討方法について議論しました。時間が1時間30分と限られていた ため、あまり細かいことには入れませんでした。議事録は文部科学省のホームページ で近いうちに公開されるそうです。また、事前登録が必要ですが、今後の会議の膨張 も可能だということですので、会議日程は分かり次第、ご連絡します。
 今後、3つのワーキンググループを作り、
@拡大教科書の標準的な規格
Aデジタルデータの提供方法
B高校における拡大教科書のあり方について見当を進めることになりました。
どれも緊急の課題ですので、早急に結果をまとめるということになりました。
 私から文部科学省に「教科書出版社による拡大教科書の発効時期とその方策」につ いて尋ねましたが、遅くとも小学校は平成23年度、中学校は平成24年度という回答の みで来年4月から全て改善するというような回答はありませんでした。また、どのよ うに教科書出版社に発効を促すのかという質問もしましたが、「普及推進を計ってい く」という回答のみで、法制度化や行政指導という方針は出されませんでした。高校 段階の拡大教科書のあり方を別に検討するということについては、小中と同じように 取り扱い、中途半端に高校段階の拡大教科書を放置しないよう要望しました。
以下に私が注目した他の参加者から出された意見を記します。

  • 発達障害の子どもたちにも拡大教科書が大変分かりやすいという声がある。(小学 校長)
  • 拡大教科書を作りやすくするためにも原本検定教科書そのものをもう少しシンプル で分かりやすい体裁にできないものか(教育委員会)
  • 拡大教科書を発効するのは、(予算は必要だが)教科書出版社の責務と考えている。 (教科書出版社)
  • ボランティアと出版社との連携により拡大教科書を発行するというスタイルも考え られるのではないか。(拡大写本ボランティア)

また、私の主観ですが、やや問題な発言も見られました。

  • 高校は視覚補助具の活用で対応していくのが妥当ではないか。((特別支援教育関 係者)
  • 高校は検定教科書数も多く、通信制や学校設定科目などもあるので、小中とは別の 対応を考えるべきではないか。(教育委員会)
  • 出版社は、営利を目的としているので、暴利をむさぼりたいところであるが・・・。 (拡大教科書発効出版社)

2007.10.11 「教科書バリアフリー法」を求める背景

2007.10.11 教科書バリアフリーを目指しての賛同呼びかけ

教科書バリアフリーを目指しての賛同呼びかけ

このメールは「教科書バリアフリー法」(案)についての賛同団体を呼びかけるものですので、転送、転載は大歓迎です。
先のメールでお知らせいたしましたが、拡大教科書の普及と充実に向けた教科書協会での検討は、拡大教科書の自社出版については先送りされ、デジタルデータの提供 については一部の教科の文字データのみ提供するという消極的なものにとどまりました。
昨年の国会での付帯決議や文部科学大臣の書簡での要請と言えども、法的には強制力がないわけでこのままでは安定的な供給体制の確立はずるずると先延ばしにされ かねません。
そこで、盲学校の高等部や高等学校段階を含め、小・中・高の全ての検定教科書が確実に拡大でも入手できるよう法制度化を求めていく必要があろうかと感 じています。また、拡大教科書の問題のみならず、点字教科書や音声教科書における問題や発達障害のニーズも含め、障害児の「教科書バリアフリー法」としての立法化 を模索したいと考えております。
まずは、仮の案を添付させていただきますので、ご一読いただければ幸いです。また、本法案の主旨にご賛同いただける団体がありまし たら、是非団体としての賛同を表明していただければありがたいです。どんな小さなグループでも「数は力」ですので、できるだけ多くの賛同団体にご協力いただきたい と考えております。

  1. 拡大教科書については、文部科学省及び教科書出版社による最大公約数的な拡大教科書の発行と全デジタルデータの提供
  2. 点字教科書については、文字データと原本教科書の早期提供。
  3. 音声教科書については、拡大や点字と同じように教科書として認知し、無償給与の対象とすることを求めています。

尚、賛同を表明していただける場合は、会の正式名称をお知らせ下さい。

障害のある児童・生徒のニーズに応じた教科用図書の保障に関する法律(案)(教科書バリアフリー法)

(目的)
第一条
この法律は、障害のある児童・生徒のニーズに応じた教科用図書の保障に関し、基本理念を定め、並びに国及び教科書出版社の責務等を明らかにするとともに、教科書保障に関する必要な事項を定めることにより、すべての児童・生徒が教育を受ける権利を平等に享受できる施策を総合的且つ計画的に推進し、もって障害のある児童・生徒の安定的且つ継続的な学習の支援に資することを目的とする。
(定義
第二条
この法律において「教科用図書」とは学校教育法第二十一条第一項(第四十条、第五十一条、第五十一条の九第一項及び第七十六条において準用する場合を含む。)により、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校において使用が義務付けられている文部科学大臣の検定を経た教科用図書、又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書及び学校教育法第百七条により採択された教科用図書をいう。(以下「教科書」という。)また、「障害のある児童・生徒」とは、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校に在籍し、視覚障害や発達障害等の障害により、教科書を読書することに何らかの困難がある児童・生徒をいう。
(基本理念)
第三条
教科書保障に関する施策の推進は、障害のある児童・生徒にとって、学校教育上、確かな学力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることに鑑み、すべての障害のある児童・生徒のニーズに応じた適切な教科書が確実に給与されることを旨として、行われなければならない。
(国の責務)
第四条
国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、検定教科書と同様に、障害のある児童・生徒のニーズに応じた、拡大教科書、点字教科書及び音声教科書等が安定的に給与できるような施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(検定教科書出版社の責務
第五条
検定教科書出版社は、基本理念にのっとり、文部科学大臣の検定を経た後、拡大教科書、点字教科書及び音声教科書等が確実に給与されるよう国が策定する施策に従わなければならない。
(拡大教科書の保障)
第六条
1 文部科学省は、特別支援学校(視覚障害教育領域)の義務教育段階における拡大教科書を発行しなければならない。文部科学大臣は、その編集に関する基準を定め、これを公表するものとする。
2 検定教科書出版社は、文部科学省が発行する拡大教科書を除き、前項の編集基準を参考に、検定教科書と同時に拡大教科書の発行を行わなければならない。
3 検定教科書出版社は、第一項及び第二項の拡大教科書を更に改変する必要がある場合、前年12月末までに製作を依頼する機関にその文字データ、画像データ及び供給用教科書の提供を行わなければならない。
文部科学大臣は、そのデータが他機関にとって利用しやすいものとなるよう事前にデータ形式に関する基準を定め、これを公表するものとする。
(点字教科書の保障)
第七条
検定教科書出版社は、文部科学省もしくは検定教科書出版社が点字教科書を発行することが困難である場合、前年12月末までに点訳を依頼する機関にその文字データ及び供給用教科書の提供を行わなければならない。文部科学大臣は、そのデータが他機関にとって利用しやすいものとなるよう事前にデータ形式に関する基準を定め、これを公表するものとする。
(音声教科書の保障)
第八条
国は、障害のある児童・生徒にとって、拡大文字もしくは点字による学習が困難な場合、または音声による学習が効果的と判断される場合、録音による図書を教科書として給与するものとする。
2 教科書出版社は、音声教科書を発行することが困難である場合、前年12月末までに音訳を依頼する機関に供給用教科書の提供を行わなければならない。
(関係機関等との連携強化)
第九条
国は、障害のある児童・生徒のための教科書保障に関する施策が円滑に実施されるよう、教育委員会、教育機関その他の関係機関及び民間団体との連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。
(財政上の措置等)
第十条
国は、障害のある児童・生徒の教科書が確実に保障されるよう、必要にして充分な財政上の措置を講じなければならない。
附則
この法律は、公布の日から施行する。

2007.9.29 教科書協会における拡大教科書の検討状況について

2007年9月29日

教科書協会における拡大教科書の検討状況について

昨年7月に文部科学大臣から教科書出版社に対し、拡大教科書の自社出版とデジタルデータの提供を要請する文書が出されておりましたが、今年度になって、教科書 協会の中に小委員会が設置され、検討が進められてきました。
5月17日、8月2日、9月19日とこれまで3会の会議が行われておりますが、先日の3回目の会議で出された方向性についてご報告致します。

まず、会議の流れですが、私は1回目の会議で、教科書出版社による自社出版を最初に検討すべきと提言しました。弱視児の多くのニーズに合致する文字の拡大教科書 を出版社の責任で発行してもらうことにより、潜在している拡大教科書を必要としているにも関わらず、供給されていない子ども達に手を差し伸べられることと現在パン ク状態にあるボランティアの負担をも軽減できるので、まずは自社出版を検討してほしいとお願いしました。
しかしながら、2回目、3回目と検討されたのは、ボランティアに提供するデジタルデータの在り方でした。自社出版についての検討予定も尋ましたが、全く予定も立っていないということでした。

デジタルデータ提供の基本的な方針として出されたのは次の通りです。

    (引用開始)
  1. @新教育課程下での提供に向け,平成20年度用教科書で試行し,問題点等を検証する
  2. Aデジタルデータの作成・提供に当たり,著作権者の許諾が新たに必要である。
  3. B教科書本文(注,写真キャプション等を含む)のプレーンテキストデータに限定する。
  4. C発行者から提供するデータである以上,正確なデータを提供する。
  5. Dデジタルデータを作成・提供する教科については、全発行者を対象とする。
    (引用終了)

著作権許諾については、文化庁著作権課より、著作権法第33条第2項により、許諾申請は必要ないという見解が示されております。 また、提供されるデータは次の通りです。

    (引用開始)
  1. @テキストデータ(TXT)
  2. ・タイトル,本文
  3. ・写真・イラストのキャプション,脚注・側注,ふきだし,著者紹介等
  4. ・表組(テキストデータに分解)
  5. A画像データ(JPEG)
  6. ・頻出する約物,アイコン(記号)等はJPEG化する。
  7. ・画像データの検証のため,国語の「筆順」表示を文字ごとに画像としてJPEGする。
  8. ※その他の画像データは除外する。
  9. ※画像データは原寸の120%,300dpiとする。
  10. (引用終了)

つまり、文字データや筆順などの一部の画像データは提供されますが、挿絵や図表、写真については除外対象ということで、提供されません。提供先もボランティアのみ で、大活字やキューズのような他社や盲学校教員には提供しないということでした。
また、対象教科は次の通りです。

    (引用開始)
  1. 小学校 国語3年(5社10冊),社会3・4年(5社10冊),理科3年(6社6冊)
  2. 中学校 国語1年(5社5冊),社会・地理(6社6冊),理科・2上(5社5冊)
    (引用終了)

趣旨は、「提供実施教科を限定して試行し、実施に当たっての問題点を検証し,データ提供の拡大・充実のための方策を検討する。」ということです。高等学校段階につ いては、「せめて盲学校採択の主要教科もデータ提供の対象に入れてもらえないか。」と尋ねましたが、受け入れられませんでした。

上記のように提供される教科も限られ、データも基本的には文字データということで、抜本的な解決とは程遠い回答と言わざるを得ません。これでは、来年4月におい ても全ての弱視児に適切な拡大教科書を供給することは不可能でしょう。
また、提供されるデータもその後の編集や製本はボランティアに委ねるということですので、ボランティアの負担も増えるばかりです。
もっともこの会議は、教科書出版社の代表で構成される委員会ですので、自発的には自社出版も勧めにくいような雰囲気を感じました。
そこで、私は、本来障害児の教科書保障は、出版社の自主性というよりは、国の施策として位置付けてもらう必要があるのではないかと感じました。大臣からの要 請と言えども、強制力はないわけで、このまま教科書協会の論理だけでことを進めるよりは、法制度かも視野に入れ、行政や政治レベルでの検討をお願いする必要があろ うかと考えています。
具体的な動きになりましたら、追ってご連絡いたしますので、その折はご協力をお願い致します。

2006年8月18日 小坂文科相からの依頼文書と文部科学省からの事務連絡通知について

2006年8月18日

小坂文科相からの依頼文書と文部科学省からの事務連絡通知について

先の国会での審議の中で小坂文科大臣から教科書出版社に対し、依頼文書を出すという答弁がありましたが、7月27日付けでその書簡が出ました。 また、それを受けて教科書課からも事務連絡文書が8月3日付けで出されております。
その内容は下記の通りですが、拡大教科書問題の解決に向けての大きな一歩と評価できるものです。これらの文書を受け、これから各教科書出版社において、 前向きに検討していただけることを期待しているところです。

(以下引用)

拝啓
日頃より教科書の発行を通じて学校教育の充実・発展にご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。 さて、文部科学省では、通常の学級に在籍する視覚に障害のある児童生徒の教育条件の改善に資することを目的として、平成十六年度から、検定教科書の 文字等を拡大した拡大教科書を無償給与する制度を実施してきました。
この間、教科書発行者には、教科書や教科書本文のデジタルデータの提供を通じて拡大教科書の製作にご協力を頂いてきたところです。 しかしながら、一方で、教科書発行者や拡大教材製作会社から発行される拡大教科書が少なく、多くがボランティア団体の方々によって製作されている現 状を改善すべきであるとの指摘や、提供されるデジタルデータの種類が少なく、その内容も十分ではないとの指摘がなされ、先の国会においても質疑が行わ れたところです。
拡大教科書の製作に当たり、ボランティア団体の方々には、手書きで努力され、弱視の子どもたちが読み取りやすいように工夫して頂くなど、大変な御苦労を 頂いているところです。
このため、各教科書発行者から、別添の要望を踏まえた使い勝手のよいデジタルデータが、全ての教科書について提供されれば、ボランティア団体の方々 の負担が軽減されることになります。
また、先の参議院や衆議院における学校教育法の一部を改正する法律案の採決に当たり、「視覚障害者への拡大教科書の普及充実を図ること」との付帯決 議もなされたところです。
各教科書発行者におかれては、このような状況を踏まえ、拡大教科書の発行についてご検討をいただくとともに、拡大教科書を発行しない場合はデジタル データを積極的に提供していただくなど最大限の取り組みをお願いいたします。 敬具
平成十八年七月二十七日 文部科学大臣 小坂憲次
各教科書発行者 代表者 殿

(別添)
ボランティア団体の要望の概要

一.デジタルデータの提供について
・小学校から高等学校段階まで全ての検定教科書のデジタルデータ
・教師用指導書として編集されたデジタルデータではなく、教科書に掲載されている全ての情報が含まれるデジタルデータ
・教科書本文と図版・写真などに区分されたデジタルデータ
・一般的に利用しやすいテキスト形式(ワープロについては相談させていただけるとありがたい)のデジタルデータ

二.「拡大教科書」の発行について
・二二〜三0ポイント程度の文字の大きさによる発行
(これらの「拡大教科書」が発行されることにより、弱視の児童生徒のほぼ全員のニーズがカバーされるため、新たに、副教材・参考書・問題集等の拡大教 材の製作に着手することが出来るというボランティア団体の意向

事務連絡 平成18年8月3日
各拡大教科書発行者 殿 文部科学省初等中等教育局
教科書課長 山下和茂

「拡大教科書」の発行と教科書のデジタルデータの提供について(通知) 標記の件につきましては、第164回国会の「学校教育法等の一部を改正する法律案」の審議において、教科書発行者や拡大教材製作会社から発行される拡大 教科書が少なく、多くがボランティア団体によって製作されている現状を改善すべきであるとの指摘や、提供されるデジタルデータの種類が少なくその内容 も十分ではないとの指摘がなされました。
さらに、衆議院及び参議院において、「視覚障害者への拡大教科書の普及充実を図ること」との附帯決議がされたところです。
文部科学省においては、これまでも標記の件について社団法人 教科書協会や各教科書発行者に対して検討を要請してきたところですが、この度、各教科 書発行者宛てに別紙写のとおり小坂憲次文部科学大臣から書簡が発出されましたのでお知らせします。
今後とも引き続き、「拡大教科書」の無償給与についてご理解とご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。


2006.7.23 拡大教科書問題の現状と課題について

2006年7月23日

「安定的な拡大教科書供給を目指して」

文部科学省のホームページに拡大教科書に関する通知文書 が掲載されましたので、お知らせいたします。

1.ボランティアの応需能力を超えた拡大教科書のニーズ

弱視児のための拡大教科書製作を巡る環境はこの数年間で大きく改善されてきた。
2003年6月には、数年来に及ぶ当事者やボランティア等の要望、及び理解ある国会議員の働きかけを受け、著作権法が改正された。この改正によりボランティアの場合は教科書協会にFAXすれば、著作権者に許諾を得なくても拡大教科書の製作作業に取り掛かれることになった。
出版社の場合も、補償金を支払わなければならないものの許諾を得るという作業は免除されることになった。

また、2004年度からは通常の小、中学校でも拡大教科書が国費で無償給与される道が開けた。盲学校や弱視学級でも出版されている拡大教科書のみならず、ボランティア製作の拡大教科書も国費で保障されることになった。
これらの流れを受け、全国の弱視学級や通常の学級に在籍する弱視児からの製作依頼がボランティアに殺到することになる。
その結果、製作作業がパンクし、依頼を断らざるを得ない事態に陥ったのである。全国の拡大写本ボランティアの窓口である全国拡大教材製作協議会によると、2004年度は依頼の6〜7割しか製作ができず、2005年度においては新規の依頼数168件に対して43パーセントしか応需できなかったということである。

そもそも全国にはどのくらいの拡大教科書を必要とする子どもたちがいるのだろうか。数年前のデータになるが、全国の盲学校の小・中学部に在籍する弱視児は487名。弱視学級には267名の子どもが在籍しているということである。
また、小、中学校の通常の学級に在籍する弱視児数は1739名という調査結果も明らかになった。これらの合計は2493名となるが、高校段階まで含めた弱視児童・生徒数を概算で推測すると3200名程度ということになる。
まず、2004年度から無償給与を受けられることになった小・中学校の通常の学級に在籍する弱視児に焦点を絞り、その実情を分析してみる。同年度に拡大教科書の無償給与を受けたのは1739名の内、518名に留まった。この1739名というのは眼鏡等を使用しても通常の教科書を読むのに何らかの困難がある子どもの数であることから考えると、1221名の弱視児はその見えにくさを自ら工夫し、克服しているか、教科書を読むことそのものがハンディとなっていることが想定される。

この1221名の存在も問題だが、518名の中でもすべての子がボランティアによるオーダーメイドの教科書を入手できたわけではない。手作りの作業ができないため、拡大コピー版でしのいだケースもあれば、過去に別の弱視児のために製作された教科書を増刷してもらったケースもある。盲学校用に発行されている拡大教科書とたまたま教科書出版社が一致したため、それを利用したケースもあった。
もちろん、このような供給でも本人のニーズに合っていれば問題ないわけだが、必ずしもそうではなく、残された手段がそれしかなかったという声も少なからずあった。
それでは、視覚障害教育を専門とする盲学校や弱視学級はどうなっているのだろうか。実は盲学校ですら拡大教科書保障はまだまだ不十分と言わざるを得ない。2001年度において拡大教科書が出版されていた教科は国語と算数・数学のみ。2002年度から筑波大学附属盲学校の英語科が英語の拡大教科書に着手。2003年度から(株)キューズが理科と社会の拡大教科書に着手し、2004年度にようやく小・中学部の主要教科において拡大教科書が揃ったという状況なのである。

しかし、これらの主要教科以外の教科書は未だに出版されておらず、高等部段階においては皆無という状況である。そこでやむを得ず盲学校の弱視児でもボランティアに依頼しているケースも一部にあるが、前述の通り、ボランティアはパンク状態にあるため、これ以上膨大な作業を依頼できるような状況ではない。このような状態が故に副教材や参考書、問題集などにはほとんど手がつけられていない。また、高校段階の拡大教科書製作には現状のボランティアの数では到底手が回らない。 更に近年、養護学校からの問い合わせも増えてきている。知的に障害のある子どもたちにとっても大きな字の教科書は興味、関心を引くことがあったり、車椅子から読書する時に視距離があっても読みやすいということである。また、LD等の軽度発達障害児にとっても効果的なのではないかという声も寄せられており、そのニーズはますます膨らんできている。

2.理想的な解決である「自社出版」

ボランティアが現実的にこれ以上拡大教科書製作を応需できない現状があるとはいうものの、弱視児にとって教科書が読めないという状態をいつまでも放置しておいてよいはずはない。 この需要と供給の極端なアンバランスを解消するにはどうしたらよいのだろうか。それは、文部科学省がリーダーシップを発揮し、出版社を巻き込んだ安定的な供給体制を構築することである。
憲法にある教育を受ける権利を平等に保障するという観点からも必要な措置と言えるだろう。理想的には、拡大教科書の発行を教科書会社に義務付けることが求められる。

仮に教科書会社が22ポイント版の拡大教科書を出版すれば、約7割の弱視児童・生徒のニーズに応えられる。その他のニーズについては現状のボランティアでも需要と供給のバランスが取れると思われる。教科書会社が30ポイント程度の拡大教科書も併せて出版してくれれば、ほぼ弱視児全員のニーズをカバーできるものと考えられる。
そうなれば、ボランティアは、副教材等の拡大に取り掛かることも可能になってくるだろう。

この拡大教科書の自社による出版義務付けについて2006年3月18日の参議院文教科学委員会において、文部科学省は次のように答弁している。

「文部科学省としても、各教科書発行者に対して、拡大教科書の作成について取組を促しているところでございますけれども、まだ各教科書発行者が拡大教科書を発行するというところまでは至っていないのはただいま先生からお話があったとおりでございます。
新たな義務を課すということになりますと民間の企業に対して規制を掛けるということになるわけでございますので、直ちにはなかなか難しい状況にはございます。
ただ、私ども、一日も早く必要な児童生徒に拡大教科書が給与されることを目指しまして、各教科書発行者と具体的な方策について検討していきたいと、こう思っております。」

この答弁内にある「新たな義務を課すということになりますと民間の企業に対して規制を掛けるということになるわけでございますので、直ちにはなかなか難しい」という論理だが、
日本の将来を担う子どもたちの教育行政をあずかる文部科学省の答弁としてはいささか消極的なのではないだろうか。そもそも文部科学省は初等中等教育局内に教科書課を置き、教科書に関する法律を所管し、民間の出版社に対し、検定や定価設定などのさまざまな規制権限を持っているのである。
国土交通省は交通バリアフリー法やハートビル法で民間の業者に対し、エレベーターやエスカレーター、スロープや手すりなどの設置を義務付けたり、障害者の様々なアクセシビリティを確保するよう義務付けている。教育分野においてもせめて「教科書バリアフリー」は国の責任で実現できないものだろうか。

遠山元文部科学大臣は2003年5月22日、参議院文教科学委員会において「学校教育の現場において、現に弱視である子供たちが例外なく拡大教科書が使えるようにしていくというのは、私は行政の責任だと思っております。その角度から、子供たちにとって最もいい方法でこの問題を解決をしていく必要があると私は思っております。」

また、同年6月11日、衆議院文部科学委員会において「いろいろな、どこでつくるかとか、どんなふうにつくるかとか、研究が必要な面もございますけれども、できるだけ早い機会に、できれば来年の四月から子供たちが親御さんの負担を経ないで適切な拡大教科書が使えるように、来年の春から弱視の子供たちの笑顔が見られるように、何とかしたいと思っております。」と答弁されている。

河村元文部科学大臣も2004年3月17日、衆議院文部科学委員会において「現時点については、ボランティア団体の御理解と御協力をお願いいたしておるところでございまして、当面そういう形で、今回、この制度、対応したわけでございます。しかし、本来的には、委員のおっしゃるとおり、学校において責任を持ってやる部分というのはたくさんあると思うんですね。そういう視点に立って、これにはきちっと対応できるように、今後どういう形でやっていくか検討しながら対応してまいりたい、こういうふうに思います。」

同年5月28日、同委員会において「これからも、やはり特に義務教育段階においては、憲法の精神にのっとりながら、児童生徒すべてに、国が最終的な責任を持って、そして適切な教育を受けられるように、教育環境の整備、きちっと努めてやりたい、このように考えております。」と答弁されている。

中山前文部科学大臣も2006年12月1日、衆議院文部科学委員会において「障害のある児童生徒については、障害の状態に応じましてその可能性を最大限に伸ばす、そして自立して社会参加するために必要な力を培うというために一人一人の状態に応じた適切な教育を行う必要がある、これが重要であると考えております。また、教育の機会均等を保障するため、障害のあるなしにかかわらず、義務教育を受けている児童生徒すべてに対して国は最終的な責任を持っているものとも考えておるところでございます。今後とも、すべての児童生徒一人一人が十分に適切な教育を受けられるよう、教育環境の整備に努めてまいりたいと考えておるところでございます。」と答弁されている。

3.デジタルデータの提供

前述の理想的な解決が将来的には望まれるが、それが当分の間困難ならば、少なくとも教科書会社に教科書のデジタルデータの提供を義務付けることが求められる。
現在、ボランティアや別の出版社は教科書の文字を一文字一文字書き写したり、パソコンに入力したりという作業から始めなければならない。
その後、誤植の確認のため何度も校正を繰り返すことになる。しかし、教科書データがあれば別の出版社でもボランティアでも今よりはずっと容易に拡大教科書を製作できるようになる。
但し、編集作業に盲学校教員等の専門家が関与することは必要だが、入力の手間が省けるだけでなく、誤植もなくなり、肝心の編集に時間と労力を費やすことができるようになる。結果的に拡大教科書の製作量を増やすことにもつながっていくと考えられる。

また、現在は写真や図表もスキャナーで読み取ってコピーしているため、鮮明度が失われることもあるが、それも合わせて解決できる。
このデジタルデータの提供について文部科学省は次のように参議院文教科学委員会で答弁した。

「教科書のデジタルデータの提供につきましては、三月の本委員会におきましても御指摘をいただいたところでございます。
私ども、その審議を踏まえまして、社団法人教科書協会に対しまして加盟各社にデジタルデータの提供について協力要請をするよう指示をいたしまして、教科書協会は、四月四日付けで加盟各社に対しまして国会での議事録を添付して協力要請の文書を発出をしたところでございます。
(中略)さらに、ボランティア団体の方々にとりまして使い勝手の良いデジタルデータとすべての教科書のデジタルデータが提供されるように、社団法人教科書協会に対しまして早急に検討するように今指示をいたしております。
教科書協会は、四月の十日に著作権専門委員会を開催をいたしまして、提供するデータの内容、提供する教科書の種類数が改善されるように検討を開始をしたと承知をいたしております。
いずれにいたしましても、義務付けというのはなかなか難しい状況もあるわけでございますが、このデジタルデータの提供につきまして、私どもとしても最善の努力をしてまいりたいと思っているところでございます。」

また、小坂文部科学大臣も次のような前向きな答弁を行った。
「本当に活字と同じように手書きで努力をされて読みやすいように作っているとか、大変な御苦労をいただいております。
今、OCRとか読み取り機で電子的にデータをデジタルデータにして、そして拡大して印刷するということは可能だとは思いますが、それでも正誤訂正の努力とか相当なマンパワーが掛かってまいります。
そういうことからすると、今答弁、局長が申し上げたように、デジタルデータを提供していただければ、それが一番簡単なわけでございますから、拡大教科書を発行しない場合にはデジタルデータを積極的に提供してほしいと。
これは義務化するのはやはり、ビジネスとしてやっている教科書の出版社に対して私は命令することはできませんが、私の名前でもう一度、この委員会で積極的に答弁したということで、再度担当の方から教科書協会に対して依頼を出すということで、これを積極的にやってもらえるように私も努力したいと思います。」

教科書出版社に対し、大臣名で依頼文書を出すというこの小坂大臣の前向きな答弁は、義務付けではないものの完全な教科書デジタルデータの提供に向けて大きな一歩を踏み出したと言える。
教科書協会や出版社も文部科学大臣からの依頼に対し、積極的に対応されるであろう。しかし、理想的な自社出版体制と違い、このデジタルデータ提供だけでは、安定的な拡大教科書供給までにいくつかの障壁が残ることになる。

@提供されたデジタルデータを誰がレイアウト編集し、最終的に教科書として印刷製本するのか。
・これらの作業を既にパンクしているボランティアがすべて担うことはほぼ不可能である。
そうなると、印刷製本を業とする出版社に発行してもらうのが合理的と考えられる。幸いなことにデジタルデータがあれば、オンデマンド印刷という技術を用い、1冊でも印刷製本することが可能になっている。
しかし自社出版でない限り、この出版社の公募や割り振り等のコーディネートを行う機関が必要となるのである。

A別の出版社がどのように原本教科書とデジタルデータを入手するのか。
・現在、ボランティアが拡大教科書を製作する場合は、教科書協会にFAXすれば、各教科書出版社から全国拡大教材製作協議会が指定する3つの拠点に原本が送付され、その3拠点から各ボランティアグループに教科書が転送されるというシステムができている。
しかし、既にこの3拠点が作業負担に悲鳴を上げており、ボランティアからも改善の声を求める声が上がっている中、更に出版社分まで負担を課すのは非現実的である。
今後、デジタルデータの提供も付加されてくることを考慮すればこのシステムも抜本的に見直す必要があるだろう。これからは出版者であれボランティアであれ、教科書協会にFAXすれば教科書出版者からダイレクトに原本教科書とデジタルデータが拡大教科書発行者に送付されるようにすべきであろう。

B別の出版社が検定教科書の著作権者に対し、どのように補償金を支払うのか。
・著作権法第33条で、出版社が拡大教科書を発行する場合、著作権者に使用許諾を取ることは免除されているが、ボランティアと違い、補償金の支払い義務は課せられている。
しかし、一般図書と違い、教科書は何十人にも及ぶ著作権者が存在する。そのすべての著者、画家、写真家当の連絡先を調べ、補償金を支払うことは自社でなければ相当な事務負担を要する。

この補償金支払い事務だけでも原本教科書出版社が代行してはどうかという提案に対し、小坂文部科学大臣は2006年6月9日、 衆議院文部科学委員会において次のように答弁している。

「教科書の補償金の振り込みなどの手続を教科書発行社に代行させることはできないのか、こういう形でございますが、これは、御指摘のとおり、民民の関係でございますし、また同時に、本来、著作権を使用する出版社がこれを行うことが権利者との間の契約という観点から必要でございまして、これを代行という形でここに第三者を介入させることは、やはりこれはちょっと無理があるということで、現状では無理だということをお答えせざるを得ない、こう思っております。」

それでは、せめて著作権者の一覧表の提出をお願いできないかという質問に対しては次のように答弁されている

「現在、そういった出版社からの実情を伺いながら、各教科書発行社が、著作権者の一覧表を提出することについて、これは、必要に応じて教科書協会に検討を要請してまいりたいと考えておりますので、そういった実情が生じたときに直接的にまた担当させていただきたい。」

他社出版にすると、このようにいくつかの問題や足かせのような課題が生じることになる。これらの障壁は自社出版体制にはなく、データ提供に伴う著作権の問題も解決できるのである。
こう考えてくると、他者出版体制の問題を解決していくよりは、1日も早く自社出版体制を整えた方が合理的であり、安定的で継続的な拡大教科書供給への近道であると言えよう。
発行責任は検定教科書出版社が負うものの実際には実績のある業者に下請けに出すことも可能であるし、盲学校教員や熟練ボランティアに協力要請することも可能であろう。費用は国費保障であるため、赤字になることはない。

4.ノーマライゼーション時代の教育バリアフリー

2006年6月、文部科学省は障害児教育の考え方を特殊教育から特別支援教育に転換し、学校教育法の一部改正を行った。この特別支援教育の理念は一人一人の教育的ニーズを把握し、それに応えていくというものである。
この理念に基づけばすべての子どもが教科書を読めるという環境を整えることは緊急の課題と言えよう。この改正案が衆参の委員会で成立する際に付帯決議も併せて決議されているが、
拡大教科書に関する事項が衆議院文部科学委員会では8項目中1項目、参議院文教科学委員会では11項目中2項目に盛り込まれた。
これらの決議に従い、1日も早く日本にいる全ての弱視児に適切な拡大教科書が手渡ることを切望している。

衆議院文部科学委員会付帯決議

・障害のある子どもの学ぶ機会を阻害する子とのないように、一人一人のニーズに対応した教科書をはじめ、教材、教具の研究と開発に努めること。 また、その自己負担の軽減に努めるとともに、特に拡大教科書の普及と充実を図ること。

参議院文教科学委員会付帯決議

・教材・教具の研究開発とその普及に努めること。特に、視覚障害者への拡大教科書の普及充実を図ること。 ・就学奨励費等、障害のある子どもへの支援措置に関しては、高等学校の拡大教科書の自己負担軽減など、必要な具体的支援を把握しつつ、総合的な検討を進めること。


2006.5.7 文部科学省のホームページについて

2006年5月7日

文部科学省 視覚に障害のある児童生徒に対する「拡大教科書」の無償給与について(依頼)

また、同じく 文部科学省のホームページの中の「教科書Q and A」 でも簡単ではありますが、取り上げられていますので、併せてご紹介いたします。


2006.1.5 日本海新聞記事より


2006年1月5日

鳥取県が全国で始めて高校段階の拡大教科書の費用をを保障することを決めました。その記事を添付いたします。
この動きがその他の46都道府県にも波及することを願っております。

「弱視でも地元高校で学べる」拡大教科書費を助成

小学校2年生用国語の教科書(上)の文字を大きくした拡大教科書(下)注:画像は省略
弱視の子どもでも読めるよう、文字が大きく書かれた「拡大教科書」。小中学生には国が無償で配っているが、高校生は有償。この教科書を使っている米子市内の男子中学生(15)が来春、卒業するのを前に、鳥取県教委は、高校生用の拡大教科書の製作費用を助成する方針を決めた。
来年度、対象になるのはこの生徒だけで、全国でも例がない措置。地元の高校を目指す生徒は「高校でも通常学級で学べる」と喜んでいる。

通常の教科書一冊は、拡大教科書にすると五−二十五冊分になる。県教委が助成を想定しているのは高校用の八教科、九十七冊。
県教委によると、県内の通常学級に通う弱視の児童生徒数は本年度、把握しているだけでも高校一人、中学校一人(記事中の生徒)、小学校四人。小中学校の拡大教科書は二〇〇四年度から国が無償で提供しており、県内では現在、二人が活用している。
男子生徒は裸眼視力が右〇・〇六、左〇・〇七、眼鏡をかけて〇・二。授業中、黒板の文字は双眼鏡の片方のような「単眼鏡」を、教科書の小さな文字はルーペを使う。
拡大教科書がない場合、男子生徒は鳥取市内の盲学校に通わなければならないため、生徒の母親は「友達と一緒に地元の学校で学ぶことができる」と喜んでいる。

一方、拡大教科書の製作は大半がボランティアによる手作業。県内で手掛けるのはわずか二団体のみ。このうち、一九九二年から鳥取市内で活動する「すみれの会」は、メンバー十人が、教科書をスキャナーで一ページずつ読み取ったり、一文字ずつパソコンに入力。保護者や教員と何度も相談を繰り返すなど、製作には最低でも三カ月かかり、製作費は一冊当たり千−二千円。一教科で一万円近くになるという。

同会は現在、県外の小学生三人の教科書十五冊を作っているが、山川友子代表(56)は「正直言って赤字。今のメンバーではこれ以上対応できない」と訴える。その上で「弱視の子どもだけ余分なお金を払うのはおかしい。画期的な制度」と県教委の方針を評価する。
県教委は、助成費として約十三万五千円を二月県議会に上程したい考えで「助成は全国にも例がなく、弱視の子どもも普通高校に通えるようになる。製作はボランティア任せなのが現状なので、態勢を整える必要がある」としている。





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